インボイスの保存義務が免除される取引
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インボイスの保存義務が免除される取引

2023 / 08 / 31

 

令和5年10月1日からインボイス制度が始まります。
原則として消費税の納税額を計算するにあたって、収入の消費税から支払った消費税を差し引いて消費税の納税額を算出します。
ただしインボイス制度が始まるとインボイス番号が記載された請求書や領収書をきちんと受け取って保存をしなければなりません。
保存をしないと支払った消費税が引けなくなるケースがあります。

しかし、下記の事項に該当する場合、例外として消費税の控除が認められます。

Ⅰ.帳簿の保存(基本的に記載すべき内容)
Ⅱ.一定の取引
 
「Ⅰ.帳簿の保存」については次の記載事項が必要となります。
・課税仕入れの相手方の氏名又は名称
・取引年月日
・取引内容
・対価の額

では、「Ⅱ.一定の取引」に該当するのは9つのケースになります。
そのケースを今回ご紹介いたします。

★販売側の交付が免除されている3つのケース
下記の3つのケースは販売側のインボイス発行が免除されています。必然的に購入者側もインボイスを受け取ることができないため、Ⅰに加え次の一定の取引を記載することで消費税控除が認められます。

⓵3万円未満の自動販売機等
代金の受領が自動で行われる機械装置で購入することで、それだけで支払いやサービスの提供が完結するものです。自動販売機やコインロッカー、コインランドリーなどのサービスが該当します。この場合、帳簿への記載事項に例として「○○市 自動販売機」と記載が必要です。

⓶3万円未満の公共交通機関
税込3万円未満の電車、バス、船舶の乗車券が対象であり飛行機やタクシーはインボイスが必要になります。また1枚のチケット当たりではなく、1回当たりの支払が3万円未満です。この場合、帳簿への記載事項として「3万円未満の鉄道料金」と記載が必要です。

⓷郵便ポストに差し出されたもの
切手を貼って郵便ポストに投函した場合の郵便・貨物サービスがこれに当たります。窓口に持ち込んで郵送した場合はインボイスが必要になります。

★特定の業界の仕入れ4つのケース
下記の業界は、一般の消費者から商品を仕入れて一般の消費者に販売する業態です。中古物件や中古車などは、一般の消費者から購入し、それを商品として販売します。仕入れの際に一般の消費者からの購入はインボイスがありません。売買の際の消費税の控除が受けられないと会社が消費税分を補うために商品の価格が上がり市場が悪化する恐れがあるため、インボイスが無くても帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
なお、相手方がインボイス発行会社である場合は、インボイスの交付を受けそれを保存する必要があります。

⓸古物営業の仕入れ
骨董品や中古車などを仕入れて販売する会社

⓹不動産販売の仕入れ
中古物件を仕入れて販売する不動産仲介業者

⓺質屋の仕入れ
バッグや時計などを担保に融資をする会社

⓻インボイス発行事業者以外からの再生エネルギー部品
不用品や廃材を集めるリサイクルショップなど

古物営業を営む場合は古物台帳に取引年月日、古物の品目及び数量、古物の特徴、相手方の住所、氏名、職業及び年齢、相手方の確認方法を記載し保存が必要です。
帳簿のみの保存で消費税を納税額から控除することが認められる場合は、この古物台帳に「帳簿のみの保存で消費税を納税額から控除することが認められるいずれかの仕入れに該当する旨」を記載した帳簿(総勘定元帳等)と合わせて保管をすることが必要になります。

★その他の2つのケース

⓼出張旅費・通勤手当など
社員が立て替えて購入することが多く、会社宛てにインボイスを発行することが難しい場面があるため免除されています。インボイスの保存はなくても、一定の事項を帳簿に記載することで消費税を納税額から控除することが可能とされます。出張旅費の場合、帳簿への記載事項として「出張旅費規程による出張費」と記載が必要です。ただし、出張に必要と思われない高額な出張旅費等については、給与として所得税の課税対象になってしまうため注意が必要です。

⓽入場券が回収される場合
駅の入場券やイベントなどで購入した切符やチケットなど、使用すると回収されてしまうような場合や、会社宛のインボイスが発行できにくいものは、インボイスがなくても帳簿のみの保存により控除が認められます。この場合、帳簿への記載事項として「入場券等」と記載が必要です。

今回は、帳簿保存のみで支払った消費税を差し引くことが出来る取引についてお伝えしました。インボイス制度では、今後免税事業者との取引で税負担が増えるというデメリットも考えられます。メリット・デメリットや取引相手・業務内容などを考慮して、インボイスに今後どう対応するかを検討することが大切です。今回のような帳簿の保存のみで消費税の負担を軽減できる場合もあります。少しでも税金の負担を軽減できるよう、インボイス制度について理解を深めていきましょう。